参考文献
鈴木 匡子: 注意障害の不思議: 神経心理学: 35 巻 2 号 p. 70-76: 2019年
注意障害の種類とは?

注意障害の質的種類として
- 注意選択
- 注意持続
- 注意転換
なんかを想像しちゃいますが
今はそういう視点に加えてもう1つ
「注意の神経基盤3つ」が提唱されているようです。
注意の神経基盤
Alerting
注意の基となる「覚醒」に着目した神経基盤です。
神経基盤ですから、神経の名前が重要となります。
Alerting「覚醒」……覚醒が関与しているのは「脳幹網様体」ですね。
ここの賦活が覚醒には重要です。

臨床的にはどうやって覚醒を上げるかの重要性が高く「脳幹網様体」がどうとか言われても……って感想を持たれそうですが、CTやMRI、SPECTなど脳画像で注意を見ていく上では見逃せないポイントであると思います。
Orienting
どの感覚モダリティーやどの空間の処理を優先させるかを決めるのが定位機能である
鈴木 匡子: 注意障害の不思議: 神経心理学: 35 巻 2 号 p. 70-76: 2019年
注意障害の「半側空間無視」や「視空間的注意」に関わる部分ですね。
こちらも神経の名前が重要となります。
それが「腹側路」と「背側路」です。
視覚情報は網膜からまず後頭葉内側面の一次視覚野に到達し、腹側と背側の2つの経路をたどって処理される。
鈴木 匡子: 脳損傷からみたヒトの視・空間認知機能のしくみ: 認知神経科学, Vol.20, No.1: 2018

あ~なんとなく授業で見たような……。

主に
「腹側路」は色や形、質感を認知する神経経路
「背側路」は奥行や動き距離などを認知する神経経路
と言われています。
参考論文では
腹側路は右大脳半球に偏倚しており、その損傷により左半側空間無視が出現する。
背側路は ~中略~ 視空間的注意に関連する。
鈴木 匡子: 注意障害の不思議: 神経心理学: 35 巻 2 号 p. 70-76: 2019年
と、言われています。
様々な視覚経路があり、その経路と「半側空間無視」が関与していることが論文で記載されています。
Executive control:課題遂行における注意機能
課題遂行の際に必要な注意機能には二つの経路が関連している。
帯状回弁蓋部系は課題のあいだ持続する注意を担い、
(外側)前頭頭頂系は課題の開始や切り替えに関わる注意に関与する。
帯状回弁蓋部系を含む内側前頭葉が大きく損傷されると無動性無言となり、
外側前頭前野の損傷では前頭頭頂系の障害により保続がみられる。
鈴木 匡子: 注意障害の不思議: 神経心理学: 35 巻 2 号 p. 70-76: 2019年

言語の保続は、切り替えが難しく、前答えた単語をつい答えてしまう症状ですね。
注意の保続……。
臨床的にはずっと何かに注意が向いていて、声をかけても生返事。
注意が切り替わってもすぐ元に戻って、正しく注意が向けられないといった症状でしょうか。
視覚性注意の臨床的症状
視覚性注意の範囲は極めて狭く、残存している右上視野内でも視覚対象を探すのは非常に困難であった。
・Trail Making Test A では有効視野内の数字もなかなか探せず、卓上カレンダーでは一度に見えるのは一つの日付のみであった。
・アナログ時計では文字盤の数字と短針を同時に見ることができなかったが、数字に長針が重なればそれに気づくことはできた。
・長方形が3つ入れ子になっている図を模写させると、長方形の大きさにかかわらず、長方形を二つしか描かなかった。
このように、机上検査では一度に見ることのできる物は1~2個であることが分かった。
鈴木 匡子: 注意障害の不思議: 神経心理学: 35 巻 2 号 p. 70-76: 2019年

まさに不思議……。
特に時計が見れないのは大変ですね。
1つの空間に1~2個しか認識出来ないのであれば、デジタル時計も大変そうです。
でも数字に長針が重なれば時間がわかるという点が本当に不思議です……。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
「注意」と「視覚」は密接に関わる重要なポイントですね。
高次脳分野は難しいですが、少しずつ新しい視点を取り入れて行けると良いですね!それでは!
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