ムセたらダメ?
ご飯を食べる、水を飲み込むといった(嚥下)に詳しい言語聴覚士(以下ST)さんのお話によると「ムセても大丈夫」と仰る方がいらっしゃいます。
誤嚥性肺炎とは「肺の中に細菌が入ってしまい、細菌が増殖し、肺の中で炎症が起こること」です。
この「誤嚥」をすることで、食べ物についた口腔内の細菌が肺に入ってしまう恐れがあるのです。
違う見方をすると「誤嚥」してしまっても「細菌が増殖」することを抑えられたら誤嚥性肺炎は発症しにくいと言われています。
肺の中で細菌が増殖することなく吐き出せたらいいわけですね。
そのため「咳をする力(咳嗽力)」は大事とされています。
ムセてもご飯を止めない理由
たとえムセながらご飯を食べていたとしても止めない理由の1つとして「栄養」があります。
誤嚥性肺炎の予防には「嚥下能力」「咳嗽力」「栄養」「口腔ケア」という4つの大きな柱があります。
どれか1つ大きく欠けてしまうと「誤嚥性肺炎」になりやすくなってしまうのです。
その中の「栄養」、つまりその人にとって必要なカロリー、タンパク質、脂質、水分などなど体に必要な栄養素をしっかり摂れているかを見ていくのです。
この「栄養」は「体の抵抗力」となります。
例え「誤嚥」して「細菌が増殖」しても、細菌をすぐにやっつけることが出来るだけの「抵抗力」があれば「誤嚥性肺炎」を防ぐことが期待できます。
「栄養」を取るには食事をするのが手っ取り早いのです。
なので場合によっては「少々食事中にムセていても経口摂取を継続する」こともあります。
じゃあムセても大丈夫?
とはいえ、ムセながらご飯を毎食食べていたら、気になるのは当然です。
ムセによる疲労感、息苦しさはあるので食事が嫌になり、ちょっとしか食べないなどの問題へ発展しかねません。
また、家族様が不安になります。
最近ではテレビでも「誤嚥性肺炎」についてよく取り上げられておりますので「誤嚥性肺炎は怖い」という印象をお持ちだと思います。
それなのに「本当にムセてても大丈夫なの?」と心配になってしまいます。
ムセを見極める
残念ながら「1食のうち2回までのムセは許容範囲」といった指標はわかりやすいですが標準化されていないため誰にでも当てはまる内容とはなりにくいです。
なのでどの範囲までのムセなら許容範囲なのかをその人に合わせて見極める必要があります。
そのため言語聴覚士はその人の
- 「咳嗽力・咳嗽の質の観察」
- 「嚥下能力の観察」
- 「栄養面の観察」
- 「口腔内の観察」
という4つの視点をお持ちです。
咳嗽の質というのは「痰が絡んだような湿性の音」または「渇いた咳」の違いを指したりします。
栄養面の観察は様々あり、食事量や足周りの長さを測ったり、体重の増減を見ていったりします。
嚥下能力は実際の嚥下の他にも、姿勢や認知面といったところへの評価も大事です。
そして「誤嚥性肺炎を予防」するにあたってとっても大事な要素である「口腔内の観察」です。
「口腔内の汚染」がある人は誤嚥性肺炎になりやすいと言われています。
口腔ケアにて誤嚥性肺炎の発症率が下がったという報告もあるため、口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防にすごく貢献しているのです。
そのため「口腔内の観察および口腔ケア」はとても大切なのです。
これら4つの要素を評価し、誤嚥性肺炎のリスクがある場合は、ほとんどムセていなくても食事を中止する可能性もあります。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
食事形態の選定や食事の中止といった問題はSTや看護師のみで決めることではなく他職種が関わって決めていく必要があると思います。
食事形態の選定や中止の基準などはとても難しいため、その指標として役立てていただければ幸いです。それでは!
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