
Aさん!
この絵カードに描かれている物はなんですか?

んーなんやろな?
あはは……。
進行性核上性麻痺で失語症状?
進行性核上性麻痺(PSP)とは
進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy,以下 PSP)(中略)は神経変性疾患
(中略),病理学的に神経細胞およびグリア細胞に異常リン酸化タウが蓄積する(中略)として定義され,特にリン酸化タウ陽性の房状アストロサイト(tufted astrocyte)はPSP を特徴づける構造物である。
淡蒼球,視床下核,中脳黒質,小脳歯状核を中心に神経細胞脱落とグリオーシスを認め,タウ陽性構造物はこれらの領域のほか運動野皮質などに認められる。
竹島 明, 大脳皮質症状を呈する進行性核上性麻痺の臨床病理学的特徴
中略入れないと意味わからないし、入れてもよくわからないですね!
神経変性疾患……脳みそは神経細胞で出来ているのでその細胞1つ1つが変性、別の物になってしまう疾患ということですね。
変性してしまう場所は主に、淡蒼球,視床下核,中脳黒質……つまりは大脳基底核付近のようです。

異常リン酸化タウ……つまり異常な「タンパク質」、それが大脳基底核に溜まり、正常な神経細胞から逸脱してしまったり(構造物)、神経細胞が脱落してしまう病気のようです。
主な症状
姿勢反射障害,眼球運動異常,体軸性筋強剛,構音障害などを主要徴候とする
竹島 明, 大脳皮質症状を呈する進行性核上性麻痺の臨床病理学的特徴

体が傾いた時、こけないように足が自然と動くものですが、それが障害されてしまい、転倒しやすくなってしまいます。

自分が動かすのではなく、他の人によって動かされると、”ガチっ”となって腕を伸ばせなかったりします。

眼球運動障害……目を動かす筋肉に異常が出てしまうことですね。
上を向いてしまって動かないことが多いです。
そして頸部も伸展して上を向いてしまって嚥下に異常が出てしまうことがあります。
症例様は?
しかし、症例様は「進行性核上性麻痺」の主な症状がなく、「構音障害」では説明できないような「失語症状」が出現していました。
姿勢反射障害,眼球運動異常は目立たず,大脳皮質症状を主徴候とする臨床亜型が存在することが明らかにされた。これらの亜型には,進行性非流暢性失語を呈する PSP with predominant speech or language disorder(PSP-SL)
竹島 明, 大脳皮質症状を呈する進行性核上性麻痺の臨床病理学的特徴
失語の授業でなんとなく聞いた覚えはないでしょうか?
進行性の非流暢性の失語を呈する病気として進行性核上性麻痺があるのです。
実際その通りでして、SLTAがとれず、重度失語症検査が必要なレベルの「非流暢失語」の方でした。
どうやら初期から失語の症状を呈する場合が多く、今後どんどんと症状が進行していくのだそうです。
介入してみて
家族様のご希望で呼称訓練を中心に行っています。
日常生活は家族様の介護の下暮らしておりますが、今後嚥下などに問題も起こりそうなので、呼称訓練のみにならず、日常生活全般を見ながら嚥下への介入が必要そうです。
そのため、現在は「整容面」への介入もはじめています。
失行のような症状も見られ「歯磨き」が出来ません。
そのため「歯磨き」も介助で行われていますが、ある程度保たれている点もあるため、そちらへの介入を認めてもらいました。
口腔ケア+口腔体操で嚥下訓練も行うことが出来ます。
とはいえ主訴の「失語症状緩和」に目を背けてはいけません。
現状、「復唱能力」が保たれていますので復唱を促しています。
「復唱」は呼称への影響が少ないと言われている(気がします)が、2カ月程進めてみると、わずかに言語能力が上がっているようにも見えます。
初めは呼称課題の理解が得られなかったですが、少しずつ「何をすればいいのか」がわかってきたのか、呼称しようとする仕草が認められます。
そしてついに「語頭音ヒント」にて正答も見られるようになりました。
加えて、元からある「復唱」能力を活かして「あいさつをする」→「あいさつの復唱を促す」ことが出来るようになってきました。
重度の失語ですが、全く何も出来ないというわけではないんだなぁという感想です。
新人さんもあきらめずにチャレンジしてもらえると嬉しいです!それでは~
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