介護福祉士の主任さんから「らくらくごっくん」について質問がありました。

「らくらくごっくん」君は推奨してる?

すぐに答えは出せないですね。
場合によっては良い介護用品なんですよ。

というと?

利点と欠点、そして対象となる患者様は限られているので
実際に生活で使うには色々なことが必要と思うからです。
と、いうことでこの記事では「らくらくごっくん」に関する【利点と欠点】そして「対象となる患者様」について考察した内容をお伝えしたいと思います。
別の記事もご参考にどうぞ!
らくらくごっくんを知ったきっかけ
介護施設で生活されていた認知症の方が誤嚥性肺炎を発症し救急搬送され、入院されたのがきっかけです。
その方は介護施設で「らくらくごっくん」を使用し食事をされていたそうです。
その方が介護施設でどのような摂取方法をとられていたかわかりませんが、入院時では「らくらくごっくん」を使って食事が出来る状態ではないと判断し、ドクターと相談した結果、経管栄養となり退院されました。
そのため「らくらくごっくん」に対してあまりいい思い出がありません。
「らくらくごっくん」を使用することで、安全に介助出来た!と思える瞬間に出会えなかった不運があります。
そこで「らくらくごっくん」に関して調べたことをまとめ、整理し、活用できる場面を考えていきたいと思います。
「らくらくごっくん」の利点
- 片手で操作が可能
- 一部電子レンジ可能
- 250mlまで入れることが可能
- メモリがあるため摂取量がわかりやすい
- ノズル部分はシリコンゴムのため口当たりが良い
- 本体を細かく分解できて綺麗にしやすく食器洗い機にも対応
- ノズル部分も考えられており、1回しごくと約5㏄出るよう調整されている
利点としては7つ上げさせていただきました!

↓実際の商品写真はこちら↓
片手で操作可能とありますが、しっかり口に入れるためノズル部分も持つことが多いため、片手で介護する時は少なそうです。
ノズル部分を取り外すと、電子レンジに入れても大丈夫とのことです。(取扱説明書必読!)
温かい飲み物だと食欲がそそられますね。
容量は物によると思いますが250ml入ります。
栄養補助食品であるメイバランスが1パック125ml、その他ラコールで200ml、エンシュアで250mlなのでどれでも使えそうですね。
などなど様々な利点があります!
「らくらくごっくん」の欠点
- 適応できる人が少ない
- 商品を知っている人が少数
- 介護する側の受け入れが悪い
- 細かな部分で操作が難しくある程度慣れも必要
上記4つを上げさせていただきました。
1つずつ詳しく見ていきます。
適応できる人が少ない
私は「らくらくごっくん」を推奨出来る対象者が少ないと思います。
らくらくごっくんの対象者として挙げられるのは
- 「固形物が飲み込めず、流動食であれば飲み込める人」
- 「お食事に対する認知が困難でお箸やスプーンで介助が困難な人」
と思います。
実際に対象者として「嚥下障害の方や認知症の方あるいはその両方」と記載されている記事も散見されます。
ここでまとめてみますとらくらくゴックンは
①嚥下障害の方
②認知症の方
③嚥下障害を持つ認知症の方
の3パターンの人を対象としています。

これを少し言い換えてみますと
①嚥下障害はあるけど、食物認知はしっかりあり、口を開けられる方
②認知症があり、食物認知が出来ず、口を開けられないけど、嚥下障害はない方
③嚥下障害と認知症の両方を持つ方
ですね。
では1つずつ考えてみましょう。
①嚥下障害はあるけど、食物認知はしっかりあり、口を開けられる方
嚥下障害がありミキサー食を食べている方を想定してみます。
食物認知がしっかりしていれば口を開けてくれるためスプーンで介助した方が普通だと思います。
そのためらくらくごっくんを使うことは少ないと思います。
嚥下障害がありミキサー食を食べているが、どうしても箸もスプーンもフォークも吸い飲みも嫌だと意思表示し、何度説得しても口をあけてくれないという人には有効かもしれません。
が、そういう人は「スプーンが嫌」などの理由ではなく、他(例:ミキサー食が嫌)に理由がある可能性が高いため、らくらくごっくんなら受け入れが良くなる可能性は低いと思われます。
②認知症があり、食物認知が出来ず、口を開けられないけど、嚥下障害はない方
認知症があり、食物認知が難しくなかなか口を開けてくれない人で嚥下障害がない人はそもそもミキサー食を摂取するのではなく、もっと食事らしい食事を提供した方が食物認知がしやすく口を開けてご飯を食べてくれる可能性が高いです。
そのためらくらくごっくんの出番は低い気がします。
③嚥下障害と認知症の両方を持つ方
これは有効かもしれませんね。
……が、少し待ってください。
そもそも、口が1㎝でも開いてくれないとらくらくごっくんでも食べられません。
ノズルが口の中まで届かないと、口から流動食がこぼれてしまいます。
そのため奥歯の方までノズルを差し込みちょっとずつちょっとずつ流し込むか、または歯が数本抜けている部分めがけてノズルを差し込み流動食を流し込む必要があります。
前者の方では時間がかかり、かつ流動食にとろみがついているとなかなか口の中までたどり着かず最悪奥で溜まったまま流れないなんてことが多いです。
後者の方もかなり危険ではないでしょうか?
寝ている時に水を口に入れられたら健常者でも誤嚥します。
なぜなら「今から飲み込む」ということが認識できず「予期せず”のど”へ流れてしまい嚥下が遅れてしまう」からです。
ここでまとめると
- らくらくごっくん対象者は「嚥下障害を持つ認知症」
- 少量でも味を感じることが出来、口を開けてノズルを受け入れてくれる人
- 可能であれば嚥下反射の遅延(飲み込む運動が出る人)なく、食塊形成(咀嚼運動)が出来る人
- +α 咳嗽力がしっかりとあり、ムセが出来る人
に限られます。
あくまで一例ですので他のパターンがあるかもしれません。
ご参考程度に見ていただけたら幸いです。
商品を知っている人が少数
私が初めて知ったきっかけの時も、名前は知っているがどのようにして使うのかわからないという人が大半でした。看護師も介護士もです。
そして他リハビリスタッフの人も使うのも見るのも初めてという状態でした。
結果病院内で知っている人に会うことが出来ませんでした。
なので知っている人は知っているのですが、知らない人の方が多い気はします。
介護する側の受け入れが悪い
介護士さんにとって一番しんどいことは「一人の患者様に対して時間を取られること」のように思います。
介護士が充足していれば一人の患者様に対してある程度時間を割けれるのですが、現状厳しい状態です。
そのため「介護負担」が増えることを介護士は避けます。
未知の用具であるらくらくごっくんに対する受け入れは悪いと思われます。
らくらくごっくんによる「介護負担」とは?
- 使用方法の理解
- 食事時間の延長
- 清掃の手間
- 本体の値段が高く,ノズル部分を定期的に交換が必要
などが挙げられます。
使用方法の理解
使用方法は難しくないですが、スプーンと比べたら手間がかかります。
今まで使ったことのないものを覚えるというのにも手間がかかり、抵抗感が生まれます。
そのため少しでも難しいと感じてしまいやすく、途端に「使えないもの」としてレッテルが貼られてしまいます。
食事時間の延長
味を感じてノズルを受け入れてくれる患者様ならいいのですが、なかなかそううまくいかないことの方が多いと思います。
なので「少しずつ流し込む」という手間が増えます。
少しずつ流し込んでいたら時間がかかってしまいます。
そうなると「使えないもの」としてレッテルが貼られてしまいます。
清掃の手間
らくらくごっくんは細かく分解でき隅々まできれいにすることが可能ですが、逆を言えば細かく分解しないと綺麗になりません。
それほど複雑な形をしていませんが、正しく元に戻す手順を覚えなければならず、手間がかかります。
そうなると「使えないもの」としてレッテルが貼られてしまいます。
ノズル部分を定期的に交換が必要
最後にこの商品はそこそこの値段になってしまうという点です。
先っぽのシリコンノズルは専用のブラシがありますが、つまりやすく交換を余儀なくされることがあります。
新しく本体を買わなくていいのですが、どんどんと費用は増えてしまいます。
「使えない」というレッテルが貼られている状態で「お金だけかかる」というのは最悪ですね。
細かな部分で操作が難しくある程度慣れも必要
どうしても「嚥下障害」があるため、様々な事に気を配らなければなりません。
「姿勢」であったりそれに付随する「クッションの位置」であったり、「交互嚥下」「声掛けの仕方」「一口量」「食事中止の目安」などなど上げだしたらキリがないですね。
しかし、介護士の方はどうしても一人の患者様に対して時間が取りにくい場合が多いため、なかなか全部を気に留めることが難しいです。
なので「この場合はこうして、この場合はノズルの先をしごいて1口量を調整して」などの対応が出来ない場面が多いです。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
らくらくごっくんですが対象の方はかなり限られた人になると思われます。
- 嚥下障害を持つ認知症の方
- 介護する人の受け入れが良いこと
- 食事自体の拒否(吐き出しなど)がないこと
- らくらくごっくんが適応できる嚥下機能は保たれていること
- らくらくごっくんが適応できる嚥下機能を判断できる人が居ること
などが挙げられるのではないでしょうか。
このうちの最後の1つ、これは医療従事者であればある程度出来る内容ではないかと思います。
しかし、判断できたからと言って即実行は問題ですね。
多職種との連携が必要です。
嚥下機能を知り、介護用品を知り、多職種と連携をとることで、支援の幅は広がります。
様々な知識を取り入れより良い支援が出来ると良いですね。
その一助となれば幸いです。それでは!
コメント