言語聴覚士は、病院や施設に多く配属されております。
実に4人のうち3人が病院(医療)で働いておりますね。1)
そして摂食嚥下の分野でたくさんの言語聴覚士の方が従事されています。
摂食嚥下の分野で働く場合「口腔ケアの知識」は欠かせません。
口腔ケアから「嚥下の状態」を確認してくことである程度スクリーニングのような評価が出来てきます。
では口腔ケアから「嚥下の状態」を確認するにはどういったポイントを見ていく必要があるのかお話していきます。
見ている10個のポイント
意思疎通
まずは意思疎通が摂れるかどうかで判断していきます。
認知症などがあると「歯磨き」の理解が不足しているため、口を開けてくれません。
「自分(患者様)が今病気になっていることの理解」
「ここが病院の病室のベットにいることの理解」
「相手は病院スタッフで歯磨きの手伝いをさせて欲しいと言っている、そのことの理解」
そういった理解がある人なのかどうかを確認します。
他にも、
「今歯磨きをしてほしいことの説明を聞く」ことが出来るのか
「自身でうまく歯磨きが出来ない事について」理解しようとしているのか
などなど見ていくポイントはたくさんあります。
開口距離
歯磨きに協力してくださった場合、次に口を開けた時の距離をおおよそを見ていきます。
もしも顎が外れやすい人であれば、口を開けるという動作すらリスクになり得ます。
そしてある程度距離が開けられる人はスプーンをしっかり口の中にまで入れられるというという指標となります。
加えて、しっかり閉められるかどうか唇の状態を確認します。
残存歯
歯があるかないかを確認します。
歯がないと、刻み食といった対応にする場合もあります。
摂食嚥下と少し離れていきますが、上歯がないと、不明瞭な構音になり、相手の言葉がわかりにくいといった問題も出てきます。
しっかりと入れ歯があるかどうかの確認や、入れ歯の適切な手入れが可能かどうかの確認が必要です。
汚染度
口腔内の汚染は「痰」「歯垢」「出血」などがあります。
どのような汚染が多いのかを確認したり、舌苔などの確認が必要となってきます。
器質的な異常や炎症の有無
舌を切除していたり、上顎の異常、口蓋裂などの問題がないかどうかの確認は大切です。
または、口内炎などの炎症があると咀嚼などに問題が出てきます。加えて、むやみに触ると痛みの原因となり、患者様との関係悪化につながりかねませんので注意が必要です。
乾燥具合
口腔内に唾液が少なく、乾燥しているかどうかの確認は大切です。
また、口腔内の乾燥を防ぐジェルを塗布することで数時間後や次の日に口腔内の汚染度・乾燥具合が変化しているかどうかの確認も必要です。さらに唇は乾燥しやすいのでジェルの塗布やリップクリームがおススメです。
頬の硬さ
頬が硬くなることで咀嚼に影響が出てきます。
また、上咽頭収縮筋とのつながりもあるため、嚥下圧にも影響が出てきます。
舌の動き
口腔ケア中の会話や、少し舌を動かしてもらうことでおおよそのあたりを付けます。
会話から構音面での評価が可能で、そこから舌がどのように動けるのかを予測していくことが出来ます。
口腔ケア中は、舌を右や左に動かしてもらうなどのやり取りはしやすいので積極的に動かしてもらうと良いと思います。
感覚
口腔内の乾燥を防ぐためのジェルには、味付きの物が多いです。
そのため「味覚」「触覚」「温痛覚」などを把握することが出来ます。
感覚が低下していると、ご飯が入った感覚も薄くなるので誤嚥のリスクが上がります。
しっかり感覚があるのかどうかの確認が重要です。
嚥下反射
口腔ケア中に嚥下反射があるかどうかの確認は必要です。
それに加えて、パルスオキシメーターでの数値変化、呼吸数の変化、声質の変化がないかどうか同時に見ていくと良いです。
不顕性誤嚥の可能性はいつまでも消えないので、不顕性誤嚥をしている可能性が高いのか低いのかを口腔ケア時にあたりをつけれると今後の介入がしやすかったり、他スタッフに注意を促せれると思います。
含嗽
“ぶくぶくうがい”のことを指します。
この動作が出来ず誤嚥してムセてしまう人が多いです。
そのため、初回介入であれば、いったん避けるのも良いです。
この動作が出来るかどうかは、MWSTなどのスクリーニングを終えて、出来ればWSTもクリアできるレベルの人からスタートするのが得策と思います。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
口腔ケアから嚥下の状態を確認出来ることでスムーズに食形態の選定やトロミの量の調節などへ繋げていくことが出来ます。
誤嚥性肺炎の予防以外にもこういった大切さがあるので是非ともチェックしてみて欲しいと思います。
それでは!
- 日本言語聴覚士協会 HP 会員動向 https://www.japanslht.or.jp/about/trend.html 2021年1月19日確認
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