
在宅で生活している認知症の患者様。
噛む力が衰えてしまったようで、ご飯の時間が長くなって介護負担が増大しているみたい。
認知も決して良くはないから「スルメ・ガム」などは飲み込んでしまいそうで……あんまりしたくないなぁ。

じゃぁ……氷咀嚼訓練はどうかな?
氷咀嚼訓練の有効性
咬合支持のある咀嚼機能低下患者を対象に、氷の咀嚼訓練を4週間行った。その結果,咀嚼ガム、咀嚼グミ、咀嚼外部評価で有意な改善がみられ、氷の咀嚼訓練が、咀嚼機能の改善に有効であることが示唆された。
片桐 啓之, 氷を使った咀嚼訓練の有効性について, 日本摂食嚥下リハビリテーション会誌 24 巻 2 号 p. 153-161, 2020年
高齢者の方約30人を対象に研究をされた結果、19人の介入群で咀嚼能力が上がり、対照群の11人には訓練を行っていないので咀嚼能力が変わらなかったのだそうです。
咀嚼の評価には「噛めば色が変わるガム」と「咀嚼能力測定用グミゼリー(どれだけ細かく出来るかを10段階で見るグミゼリー)」を用いたそうです。
2つの検査を用いてどちらも、統計的に優位な差を出し、有効性が認められました。
氷を噛むことで咀嚼能力の向上が期待出来ます。

これ良いかも!
早速初めてみよう!!

あ、ちょっと待って!
しっかり注意点を確認しよう!
氷咀嚼訓練の注意点
認知機能が低下している人は要注意
上記参照元の論文では「認知機能が保たれている」ことが前提でした。
高齢者の中では、リハビリの意図や効果が伝わりづらく、拒否なども見られます。
特に食事拒否がある人に対して「氷咀嚼訓練」が活用できるか怪しいところです。
- 本人or家族が望んでいる
- 唾液嚥下能力が保たれている
- 氷咀嚼訓練に対して吐き出しがない
- 反応が乏しくなく、しっかり噛んでくれる
こういったポイントを事前に評価する必要があるでしょう。

またしても認知の問題が……。

比較的受け入れやすい『氷菓子』であれば受け入れやすく「吐き出し」といった問題は少ないかもしれません。
もし、糖尿病などの基礎疾患がない在宅領域の場合は「ICE BOX」(森永製菓)といった味付きの氷を本人様に合わせた硬さまで常温放置し、「氷菓子」と伝えて食べてもらうのが良い方法であると思われます。
口腔ケアを事前にしっかり!
氷は冷たく、嚥下反射を惹起しやすいとはいえ、誤嚥は怖いですよね。
万が一誤嚥をしてしまっても誤嚥性肺炎のリスクを減らすためにしっかりと「口腔ケア」を行っておくことが大切です。
また「咳嗽力」が保たれている人の方が安心して介入できますね。
訓練の方法
参考元の論文では……
- 姿勢は自由
- スプーン介助
- 自由咀嚼
- 1.5cm程度の氷を使用(約2ml)
- 1回に10個の氷を咀嚼
- それを1日2回(午前/午後)
- 週5日を4週間
と、訓練頻度が多く在宅領域では結構ハードな介入です。
こうなると、家族様の協力が必要となりますね。
病院でも、午前午後と分けられると少し辛いですね……。
摂食機能療法は1日1回しか算定出来ませんし、3か月以内という制限付きだったりしますしね。
看護師さんなどの協力が必要となるかもしれません。
嚥下+咀嚼訓練として、1日1回算定し、8週間様子を見てみる感じでしょうか……。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
「氷咀嚼訓練」は6つの利点があり、工夫をすれば認知症の人でも対応可能な訓練であると思います。
咀嚼能力の低下は低栄養などと関連があるなど研究が進められているので、「咀嚼」という部分にも、しっかり対応出来ると良いですね!
臨床などで何かの参考となれば幸いです。それでは!
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