
咽頭期障害って?

嚥下5期モデルと呼ばれる、”飲み物が飲み込まれるまでの運動を5つに分ける”考え方がありまして。
それの4番目が咽頭期と呼ばれています。
まさに「ゴックン」と飲み込む瞬間のことを指します。
この「ゴックン」が障害されること……この問題のことを咽頭期障害と呼びます。
完全側臥位法とは?

ベットで側臥位となり、食事を摂ってもらう嚥下補助技法です。
この方法を活用することで上記のようなメリットがあります。
誤嚥を予防できる
嚥下能力を上げるために活用するというよりかは、誤嚥を防ぐために活用します。
なぜ誤嚥を防げるかというと以下2つの点があげられます。
- 気管に入らず、食べ物が中下咽頭に貯留するようになる
- 重力が気管側に働かないため、弱い咳嗽力でも喉頭から離すことが出来て、誤嚥を防げる

嚥下後の残留する位置が座位では下咽頭が中心であるのに対し、完全側臥位法では中下咽頭が中心となるため、披裂間切痕からの喉頭侵入が生じにくいことを利用している。
松井亮太 他6名, 咽頭期摂食嚥下障害に対し,完全側臥位法による嚥下の導入後に座位での嚥下に切り替えを行った1例, 日本静脈経腸栄養学会, Vol.1(4) 2019年
嚥下をしたとしても、食物が咽頭に残留してしまう嚥下障害があります。
食物の残留は、重力であったり、息を吸ったりする途中で誤嚥をしてしまうことが多いです。
ですが、完全側臥位法では食物の残留が中下咽頭となり、重力は気管の方へ働かず、息を吸っている時でも誤嚥しにくくなります。
万が一誤嚥してしまっても、重力によって気管側へ落ちていかない事により、咳嗽力がある程度保てている人なら、咳によって誤嚥性肺炎を防ぐことが期待出来ます。
咽頭の貯留量が増える


健常成人男性の MRI 画像を用いて作成した樹脂咽頭喉頭モデルで誤嚥が起こるまでの咽頭貯留量を測定した結果
座位では 4.6mL であったのに対し、完全側臥位では14.2mL と貯留能が向上することが明らかになった。
松井亮太 他6名, 咽頭期摂食嚥下障害に対し,完全側臥位法による嚥下の導入後に座位での嚥下に切り替えを行った1例, 日本静脈経腸栄養学会, Vol.1(4) 2019年
このように、座位と比べて3倍程度、咽頭に貯留しても誤嚥しない可能性があるのです。
では、貯留量が増えたから何が良いのでしょうか?
咽頭期障害の人に有効と言われている
咽頭への貯留量を増やせることで
- 嚥下反射惹起不全(ゴックンと飲み込みの運動がでないこと)があり、1口量を多くしないと嚥下反射が起こせない人に有効である。
- 食道がしっかり開く方を下にすることで、誤嚥を防ぎつつ、嚥下をしてもらって少しずつ食道へ流していける。
食道が開く方を下にすることで、少しずつでも食塊を食道の方へ駆出していける望みがでます。
重度嚥下障害でも経口摂取獲得が可能となる例がある
完全側臥位群では老衰による終末期の症例でも安全な経口摂取が可能となり、対照群と比較し死亡までの平均欠食期間が有意に短縮(17.3→7.3 日)した
工藤 浩 他6名, 重度嚥下機能障害を有する高齢者診療における完全側臥位法の有用性, 日本老年医学会雑誌 第56巻 第1号, 2018年
終末期となってしまっても、お楽しみレベルの経口摂取も出来る可能性があるので、口から食べることを最期まで諦めないでいられるかもしれません。
また、重度嚥下障害から座位でご飯を食べることまで回復することもあるそうです。
回復の見込みがあるのは嬉しいですね。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
完全側臥位法は重症の嚥下障害の方にも簡便に、かつ看護師さんへも難しい指導なく、即実行できるほどの即戦力となる技法だと思います。
これらの情報が臨床で少しでも活かしていただければ幸いです。それでは!
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