重度失語症の方との関わり方の1つ”カラオケ”

臨床メモ
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それはどこにでもある訪問リハビリ事務所での出来事。

ケアマネ
ケアマネ

失語症の利用者様の言語訓練をお願いします。
介護士の介入が毎日必要な方で、限度額的にリハビリは週2回でお願いします。
介護士の人は言語リハに前向きに考えてくださっています。
介護士でも出来て、短時間で可能な言語リハってありませんか?

言語聴覚士
言語聴覚士

わかりました。
少し考えてみます。

言語聴覚士
言語聴覚士

……。      

言語聴覚士
言語聴覚士

困ったぞ。「はい」、「うん」、「そう」、「ううん」、「いや」、「あかん」
くらいしか喋れない超重度な失語症(ブローカ失語)の方なのに介護士でも出来る言語リハだって!?どうしよう!何をしてもらったら良いんだろうか……。

言語聴覚士
言語聴覚士

いや……待てよ!?
”あれ”はどうだろう?

カラオケの効果

カラオケの効果についていくつかお話させていただこうかなぁと思います。

・肺機能

・認知機能

・舌のちから

肺機能

声を出すには息をしっかり吸う力がないと出来ません。

実際、26名の高齢者の人にカラオケを行った場合とそうでない場合で優位に1秒吸気量に有意差があったそうです。

カラオケをした方が、していない人と比べて1秒間に吸える息の量が増えるということですね。

それだけ呼吸機能が、しいては肺機能が向上したのだそうです。

呼吸は大事ですから、しっかりカラオケで肺機能が向上できると良いですね。

認知機能

これがすごい点です。

肺機能を調べた人達は認知機能についても調べたそうです。

カラオケをした高齢者は、カラオケをしていない高齢者の人に比べてFAB(高次脳機能スクリーニング検査)で優位に点数差が出たそうです。

特に「干渉による感受性」と「制御抑制」で点数に有意差があったそうです。

干渉による感受性」は『自分が1回手を叩いた時は相手に2回手を叩いてもらい、自分が2回手を叩いたら相手に1回手を叩いてもらう』やつですね。

これで自分が「1-1-1」としたら相手は「2-2-2」となり、「1-1-2-1-2-2-2-1-1-2」と自分が叩いたら「2-2-1-2-1-1-1-2-2-1」と相手が手を叩けるかどうか見るテストです。

制御抑制」は上記の課題後に「自分が2回叩いたら相手に叩かせないよう」伝えてしっかり出来るかを見るやつです。

「1-1-2」と自分が叩いたら相手は「2-2-0」となり、「1-1-2-1-2-2-2-1-1-2」なら「2-2-0-2-0-0-0-2-2-0」となりますね。

なかなか難しいやつです。

これの正答率がカラオケをやることで上がるらしいです。統計学的に有効だと証明されました。

舌のちから

最後が舌のちからです。

舌で出せる圧力が重要になります。

この舌のちからが全くないと、豆腐ですら舌で押しつぶせません。

これがしっかりある人は、ミカンを舌で押しつぶして果汁を楽しむことが出来ます。

カラオケではしっかりと言葉がしゃべれないと楽しめません。

しゃべるということは舌を使います。

そのためカラオケを続けることで舌のトレーニングになるのです。

カラオケの利点

呂律面での改善が期待

残念ながら失語症に対しての効果は望み薄ですが、舌圧が上がることなどから「呂律≒構音」、音を産生する点においては有用であると思います。

ことばが出ない、喋れないというのも色々あって、頭がダメな場合と口がダメな場合があります。

頭はクリアだけど口がダメな人は「呂律≒構音」での問題が強いため「構音アプローチ」そしてそのための「歌唱」の取り組みは良いのかなぁと思います。

他職種でのアプローチがしやすい

「介護士」との連携の際、もしも出来るなら「カラオケ」でのやり取りを推奨する場合があります。

「リハビリの1つ」という観点でも大切ですが、「重度失語症の人」に対してどうやってやりとりをしていったらいいんだろうかと不安にかられる人に向けてカラオケを推奨したりします。

そういった人のために失語症の人と「一緒に出来ること」の提案は大事じゃないかなぁと考えます。

重度失語症でしたら右麻痺の方である場合が多いと思います。

片手が麻痺だといろんなところで不便でして、何よりも「一緒に出来ること」が極端に減ります。

出来ることが減るのは自尊心などの低下につながりやすく、引きこもり孤独死などの問題へ発展しかねません。何か出来ることを介護士の人に提案できる力は必要だと思います。

カラオケ自体が訓練目標となることも

訪問リハビリの場合「通所リハビリテーション」へ繋げることが目標の1つです。

それ以外にも「活動性の向上」などもあります。

どちらも「カラオケ」とつなげやすいですね。

「通所リハビリテーション」ではレクリエーションの1つとして「カラオケ」が実施されることが多いです。

そのため「通所で歌うために効果的な練習がしたい」といった要望を叶えることも出来ます。

それ以外にも「趣味がカラオケ」で良く歌いに行っていた人は「カラオケへ行く」ことが目標となったりします。

  • 「歌うこと」
  • 「カラオケ屋まで行くだけの体力つくり」
  • 「金銭面でのトラブルがないように認知リハビリ」

などなど目標の立て方にもよりますが、リハビリへのモチベーションアップにつながる可能性もあります。

まとめ

ここまでご覧いただきありがとうございます。

比較的、こちらの話を理解してくれるブローカ失語の人はまだ「カラオケ」の理解が良く、メロディをこちらで提示するだけで歌ってくれる人もいらっしゃいます。

それこそ、「はい」、「うん」、「そう」、「ううん」、「いや」、「あかん」ぐらいしか言えない人でも「も~い~くつね~る~と~」と歌いだしを聞いてもらったら「お正月」と言ってくれたりもします。

そのため「カラオケ」が出来るかどうかの”評価”もまたリハビリの仕事、役割であるのかなぁと思います。

こういった情報が何かの参考になれば幸いです。それでは!

参考文献

Atsuko Miyazaki,Hayato Mori Frequent Karaoke Training Improves Frontal Executive Cognitive Skills, Tongue Pressure, and Respiratory Function in Elderly People: Pilot Study from a Randomized Controlled Trial International Journal of Environmental Research and Public Health 2020 Feb 24

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