在宅で、脳卒中の方のリハビリを行っていると時折「よだれ」(流涎:りゅうぜん ”りゅうえん”と呼ぶ人もいます)に関する質問を受け付けます。

どうしてもよだれが出てしまうんです。
何とかなりませんか?
脳卒中で片麻痺となると、感覚も麻痺してしまうため、よだれが口からこぼれていることを自覚できません。
それゆえ主に家族様が気にしており、場合によってはなかなか本人に言えなかったりもします。
そんな”よだれ”に対してどのようなアプローチがあるのでしょうか?
アプローチ方法
薬
流涎が気になる方へ医師に相談して処方箋を出してもらう場合があります。
とある論文では「スコポラミン軟膏」と呼ばれる塗り薬で効果があったとされています。
耳の裏側に薬を塗ることで流涎回数が低下、吸引回数が減り、介護量軽減、本人様の苦痛を和らぐことが出来たようです。
ただ、唾液分泌量を減らすわけですから、食事前などでは使用できそうにないですし、効果が表れすぎると口喝に繋がる恐れもあります。
塗った何分後に効果が表れてどれくらい塗ったら何時間効果が出るのかなど、個人差もあり、使用には気を付けたいところです。
さらに「薬」とりわけ塗り薬となると、皮膚の問題やアレルギーなど考慮すべきことはたくさんあります。
医師(可能であれば皮膚科医)へ相談する前に『薬を塗布する際の問題点』について薬剤師の方の意見も聞けると良いですね。
その後意見をまとめて医師へ相談し、処方可能かどうか判断してもらう流れが無難だと思われます。
姿勢アプローチ
【脳卒中の流涎】であれば顔が下に向いていることでよだれが出ている場合が多いと思われます。
なので顔が下に向かないような姿勢をとってもらい、流涎を防ぎます。
しかし、これも問題が山積みです。
- 動作時、作業時は下を向く
- 唾液誤嚥リスク
車椅子の移乗など足元をしっかり確認してほしいタイミングはどうしても下を向いてもらいたいです。
次に作業時、とりわけ食事摂取中は口を開けるわけですからその瞬間にドバっと唾液が出そうですね。
また、リクライニングベッドなどを活用して流涎を防げたとして、今度は誤嚥リスクが浮上します。
しっかりと口腔ケアなどで誤嚥性肺炎予防を行いたいですね!
感覚アプローチ
口周りの感覚を摂り戻してもらうために「感覚入力アプローチ」を行います。
冷圧刺激や温圧刺激などの入力とフィードバックを繰り返し行います。
問題点として失語の人に対してはフィードバックが難しい点、脳卒中発症後6ヵ月以内で脳の可塑性がある間のみ感覚強化の効果が期待できるためそれ以降は難しい可能性です。
代償方法
一番実用的と思われる内容です。
涎があることでの問題点として
- 不潔
- 見た目が悪い
- 服が汚れてしまう
といった点です。
一番初めに思いつくものとして「よだれかけ」があります。

しかし、高齢者の方に対して常によだれかけを使用するのは本人様にとっても家族様にとっても苦痛です。
そのため実用性があるのが「マスク」です。
マスクのポイントは
- 口元を隠せる
- 服を汚しにくい
- 洗って清潔に保てる
などが上げられます。
デメリットは”食事時は外すため、よだれを防げない”があります。
しかしそれはエプロンなどで代用可能です。デイサービスなどへ行くと服を汚さないようにエプロンを皆付ける場合が多いので目立ちません。
下記に「洗えて」「通気性もいい」マスクを紹介します。
白は汚れが目立ってしまいがちですが、他の色は目立ちにくいので白以外をお勧めいたします。
こうすることでデメリットを回避でき、家族様の満足感を得られる可能性が高いです。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
よだれに関して本人様へ直接言うと関係が悪化してしまうことがあります。そのため本人様への同意が得にくく、アプローチが難しい場面でもあります。
家族様と相談を密にし、別の案として「マスクの着用」などを勧めるのも良いかもしれません。
臨床でお役に立てれば幸いです。それでは!
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