
論文から得られた知見
論文1
参考
大西 慶彦,田中 尚,難波 忠明,岸 本大,猪野 正志,小澤 恭子: 大脳皮質基底核症候群(CBS)の着衣障害に対する指導方法の検討: 日本高次脳機能障害学会, 高次脳機能研究, 第37巻,第1号: 2017年
上記論文では、大脳皮質基底核症候群で着衣失行が認められ、その介入について記載があります。
大脳皮質基底核症候群とは
パーキンソン症状(筋肉の硬さ、運動ののろさ、歩行障害など)と大脳皮質症状(手が思うように使えない、動作がぎこちないなど) が同時にみられる病気です。
身体の左側または右側のどちらか一方に症状が強いのが特徴ですが、典型的な症状に乏しく、診断の難しい場合が少なくありません。
難病情報センター: https://www.nanbyou.or.jp/entry/142: 2021年8月15日確認
症状として、「明らかな麻痺がなく、ボタンを留めるなどの巧緻動作がある程度保たれているにもかかわらず、着衣に時間がかかる。」とありました。
他に
- 服の左右表裏のエラー
- 袖を通す際に引っかかるエラー
- 他人や人形に服を着せるのは問題がない
といった特徴があったようです。

自分の服は着れないのに他人に着せたりするのは出来る
着衣失行の不思議。
で、論文内では「あえて健側上肢から袖を通す」ことである程度の問題が解決したとのこと。

脳卒中の場合、患側側から腕を通すのが基本ですね。
健側からやっちゃうと服のせいで健側側の可動範囲が狭まりますからね。

論文内では、「LKA:肢節運動失行」が見られたとのこと。
LKAは、豆をつまんだり、指先を使った細かい動作が難しくなる病気で、一側のみ出現します。
このLKAが出ていない健側から袖を通すと着衣失行が出ずにうまく服が着れたそうです。
論文2
参考文献
山本 潤,前田 眞治: 開眼・閉眼でみた着衣障害の徴候: 日本神経心理学会, 神経心理学雑誌, 第34巻,第2号, 2018年
右頭頂葉浮腫により、左上下肢の脱力により入院された症例様が書かれていました。
神経心理学的所見は「構成障害」となり、着衣失行が認められたそうです。
そこで1番の問題となったのが「袖を通す」という動作が難しかったようです。
開眼で行うのではなく、目をつぶって手渡しで服を着てもらうと、袖を通すのが楽になり、その他の新たな問題が検出されなかったとのことです。
ある程度認知面が保たれている場合はこういった評価も必要かもしれませんね。
論文3
参考文献
安藤杏子: セッティングを工夫したことで着衣動作が可能となった症例 -生き甲斐を取り戻すために-
この論文に記載された「セッティング」とは
- 上着の形状を整え
- 衣服の位置関係を明確に
- 本人様にとって左右の判別がしやすいようにして(論文内では上着の後ろを上向きに置く)
- 羽織ってから腕を通してもらう
といったプロセスを踏むことで自力で更衣が可能となったとあります。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
ズボンについての記載はなく、探したものは全て上着のみとなります。
着衣失行へのアプローチはまだまだ難しく、評価方法が一定ではないのでどう介入するかが問われます。
こちらの記事もご参考に頂ければ幸いです。
それでは!
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