咀嚼能力と認知症に関する研究について
- 疫学調査研究
- 動物実験
- 神経画像研究
エビデンスってあるの?
皆が気になるところですね。
システマティックレビューやメタ分析では、咀嚼が認知症・認知機能の危険因子であるとの結論は見出せていない。
木本克彦, 咀嚼と認知症に関する研究レビューと今後の研究展開, 日本補綴歯科学会 12 巻 2 号 p. 135-143, 2020年
様々な疫学調査研究がおこなわれていますが、医学的根拠があると認められているわけではなさそうです。
しかし、多くの横断研究やコホート研究がされているのでエビデンスレベルⅠとはいかなくてもⅡはあると思われます。
そんな「咀嚼能力と認知症」に関する研究についてのお話です。
疫学調査研究

【愛知老年学的評価研究プロジェクト】というところが出している研究で「4000人」を対象にした前向きコホート研究があります。
その研究によると
- 歯がなく、義歯も使用していない人は認知症リスクが高い
- 歯がなくても義歯を使用していたら、認知症リスクは歯がある人と同等
という研究結果だそうです。
4000人を対象にした結果なのですごく参考になる研究ですね。
動物実験

噛む力を意図的に弱くしたネズミを用意します。
柔らかい食事しか与えなかったり、歯を抜いたりしてそういったネズミを用意するのです。
そして、健常なネズミと比較するわけですね。
その結果、咀嚼能力の低いラットの方が普通のラットと比べて、記憶を司る「海馬」の細胞数が低下していたのです。
他にも、迷路課題などで同様に、咀嚼能力の低いラットの方が成績が悪かったのだそうです。
動物実験からは、咀嚼能力と認知機能の関連が強く支持されているみたいですね。
神経画像研究

「脳の血流量」を測定する『fMRI』
それを使った研究では「ガム」と脳の賦活性について調べた論文があります。
その論文によると「海馬」領域の賦活も確認されているらしいです。
今後、「咀嚼」と記憶面の関連性に注目が集まりそうですね!
実際、ガムで記憶力の商品も出ていますし。
試験前にガムをかむことで成績が良くなるといった研究も出てきたら面白そうです。
足底接地と咀嚼能力
では、実際に「咀嚼能力」を上げるにはどのような方法がいいのでしょうか?
ST的には「咀嚼訓練」にてガムやするめを噛むといった訓練が思いつきますが、もう1つ重要なポイントが『足底接地』です。
足底接地と足底離脱間の咀嚼能率は足底接地の方が大きい値を示した
新谷 明昌,他7名, 足底接地の有無が咀嚼運動に与える影響, 歯科学報 Vol.116, No.3, 2016年
優位な差まではなかったとのことですが、臨床的にも「足底接地」の重要性は広く言われているため、やはり足底接地は重要のようです。
そこでネックになるのが、STは足関節に関する知識が不足しているという事!
寝たきりで車椅子移乗頻度も少ない人は「足関節」が硬くなりやすいです。
ここはPTさんやOTさんと連携し、足関節にも着目したシーティング,姿勢調整が重要となりますね。
まとめ
ここまでご覧いただきありがとうございます。
咀嚼訓練が「認知症予防」の1つとなるので、今後STとしては攻めの食形態、食事訓練が求められるかもしれません。
様々な知識を付け、よりよいアプローチが出来るようなると良いですね!それでは!
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